スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム

スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム

プロジェクトについて
 
概要


磁場閉じ込め核融合研究における中心課題である、プラズマ乱流による熱・粒子・運動量と核融合反応で生成される高エネルギー粒子の輸送過程について、「富岳」を用いた超大規模の位相空間マルチスケール・シミュレーションを実現し、データ科学手法との融合により、その機構解明に挑戦する。

目的



人類初の持続的核融合燃焼プラズマの実現を目指し、我が国が参画する国際巨大プロジェクトとして、国際熱核融合実験炉ITERの建設がフランスで進められている。ITERなどの磁気核融合では、1億度を超える高温ガス、すなわち超高温プラズマを磁場により装置内に閉じ込める。この核燃焼状態の維持には、乱流をともなう非線形挙動を示すプラズマを制御し、安定に閉じ込める必要がある。そのためにはプラズマ内部の密度や温度分布がいかにして形成され、また、電磁場揺らぎをともなって自発的に発生する擾乱に対してプラズマがどのように応答するかを理解することが極めて重要となる。こうした核燃焼プラズマ挙動の本質的理解と予測には、正確な物理モデルにもとづいた最先端のシミュレーションによるアプローチが不可欠であり、また、その効率化のために計算科学とデータ科学を融合した手法が必要とされている。
 
本研究では、核燃焼プラズマ閉じ込め物理という未踏の科学領域において、「富岳」を活用した超大規模シミュレーションによる成果を早期に創出することを目指す。

4つのサブテーマ


核燃焼プラズマにおいて、電磁場擾乱をともなうプラズマ乱流や波動との共鳴相互作用によって熱・粒子・運動量が系外に運ばれる輸送過程に着目し、超大規模計算機シミュレーションとデータサイエンス手法をプラットフォームとして、以下の4つのサブテーマに取り組む。
 
[1] 核燃焼プラズマのマルチスケール乱流輸送シミュレーション
[2] 核燃焼プラズマの自発回転と過渡応答
[3] 核燃焼生成高エネルギー粒子の閉じ込め解析
[4] 核融合大規模シミュレーションへのAI/データ科学の融合的アプローチ

実施体制



名古屋大学、量子科学技術研究開発機構( QST)、核融合科学研究所( NIFS)、日本原子力研究開発機構( JAEA)が有機的な協力関係をもって課題の推進にあたる。
 
本課題に関連した国際的な核融合実験としては、現在建設が進んでいる ITER装置をはじめとして、欧州における大型トカマク実験装置 JET、日欧共同プロジェクトで建設が進んでいる JT-60SA、豊富な実験データの蓄積がある臨界プラズマ試験装置 JT-60U、現在国内で唯一の大型核融合実験を実施している大型ヘリカル装置 LHD、があげられる。これらの国内および国際的な実験グループとも密接な連携を保ち、「富岳」による世界最先端の核燃焼プラズマのシミュレーション研究を展開する。